健康的で美しい素肌を保つためにマッサージクリームやボディスクラブを使ったり、ムダ毛を処理したり、日焼け止めを塗ったりして、ボディケアにも気を遣っている女性は多いのではないでしょうか。
そのなかでもつい見落としがちな脇の下は、実はトラブルが多く、多くの人がお悩みを抱えている部位です。脇の下にできるシミや黒ずみは、原因によっては放置していると深刻化することもあります。
このコラムでは、脇の下のシミや黒ずみの原因を解説するとともに、適切なケア方法や治療法をご紹介します。しっかりと対策をして、“ワキ美人”を目指しましょう。
見られたら恥ずかしい脇の下のお悩みとは?
実は、脇の下は皮膚トラブルが起こりやすい部位です。そもそも他の体毛よりも黒くて太い脇の毛があり、汗で湿気やすく、皮膚同士がこすれやすい状態にあります。さらに他の部分に比べて皮膚が薄くデリケートで、刺激に弱いといった特徴があります。
脇の下の茶色いシミや黒ずみがなぜできるのか原因がわからず、対処していない方もいらっしゃいます。そのため「ノースリーブが着られない」「水着になることができない」と、見られることに恥ずかしさを感じる方も多いようです。
以下では、医師の視点から脇の下にできるシミや黒ずみの原因を解説します。
脇の下にできる茶色のシミの正体とは?
シミとは、肌が何らかの刺激を受けた後に、色素(メラニン)が過剰に生成されることによって発生する現象です。
外的刺激やダメージを受けると、肌に炎症が起こってメラニンを生成する細胞であるメラノサイトが活性化され、メラニンが過剰に作られます。このメラニンが肌に沈着すると、シミになってしまいます。これが「炎症後色素沈着」と呼ばれる、脇のシミの正体です。
炎症につながる刺激にはいくつかの原因があります。
脇の下の圧迫や摩擦による刺激
脇の下は腕と体が接触する部分であるため、動くたびに肌に摩擦が生じます。特にタイトな服や硬い素材が当たると、摩擦によってかゆみや炎症を引き起こすことがあります。
脇の毛の剃毛や脱毛による刺激
脇毛の処理を行う際に、カミソリで剃ったりワックスで抜いたりする刺激で、皮膚が炎症を起こす場合があります。
脇に使う制汗剤などに含まれる成分
脇の臭いや汗を抑制するために使われる制汗剤やデオドラントスプレーの成分の中には、刺激となって炎症を引き起こすものがあります。
また、汗に反応して毛穴を塞ぐことで色素沈着を誘発する成分もあるため、使用には注意が必要です。
ナイロンタオルによる脇の下への刺激
お風呂で体を洗う際にナイロンタオルを使用している方は要注意です。ナイロンタオルは繊維が比較的硬く、こすりすぎると肌に強い刺激を与えて炎症を引き起こすことがあります。この炎症による茶色〜黒色のシミは「摩擦黒皮症(まさつこくひしょう)」と呼ばれています。
脇の下にできる摩擦黒皮症とは
摩擦黒皮症は、別名「ナイロンタオル黒皮症」と呼ばれています。入浴時に硬いナイロンタオルやボディブラシなどで体をゴシゴシと機械的にこすることが原因で発生する皮膚疾患です。
摩擦黒皮症の原因は、長期間の刺激によるメラノサイトの活性化です。メラニンが過剰に生成されて色素沈着が生じますが、脇だけでなく首の付け根や背中の上部など、強くこすってしまいがちな部位に現れます。
痛みはありませんが、かゆみを伴うことがあり、掻きむしことでさらに症状が悪化することがあるため、予防やケアが大切です。
脇の下にできる黒ずみの正体とは
脇の下の黒ずみにはいくつかの種類があり、原因によってその正体は異なります。
脇の下の毛穴の角栓の酸化
脇の下は他の部位に比べて汗や皮脂を排出しやすく、さまざまな汚れと角質と混ざった「角栓」と呼ばれる老廃物が毛穴に詰まりやすい状態です。脇の下に使用される制汗剤などの成分も角栓の原因となります。
毛穴に詰まった角栓は、最初は白くポツポツと凹凸が目立つ程度ですが、放置すると酸化して黒くなり、黒ずみの原因となります。
さらに、角栓で塞がれてしまった毛穴はアクネ菌が増殖しやすい環境のため、ニキビになりやすく炎症を引き起こしてシミの誘因となります。
脇の下の埋没毛
カミソリなどで脇毛を自己処理したあとに残る毛根部分や、毛が皮下に留まって皮膚から透けて見える埋没毛などの脇毛も、黒ずんで見える原因です。
脇の下で起こった炎症後の色素沈着(茶色のシミから悪化)
脇の下にできるシミには、悪化するものがあります。圧迫や摩擦による刺激やナイロンタオルによる刺激など、慢性的な摩擦が続くことによって、初期段階では茶色いシミが少しずつ濃くなり黒ずみとなってしまいます。
脇にできる脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
脂漏性角化症は、シミの状態からさらに皮膚が盛り上がるほどメラニンが蓄積してしまう症状です。皮膚の老化現象によって生じるため「老人性イボ」とも呼ばれています。
脇の下にできる脂漏性角化症とは
脂漏性角化症とは、わずかに皮膚が盛り上がったイボ状の皮膚良性腫瘍で、脇の下だけでなく顔や頭、胴体などにも発生します。
加齢によって皮膚の新陳代謝(ターンオーバー)のサイクルが乱れ、メラニンが排出されずに少しずつ蓄積されることで出現します。濃い茶色〜灰色、黒色をしており、肌が黒ずむ原因となります。
ウイルス性のイボではないため、人にうつることはありません。放置しても問題ありませんが、皮膚がんなどの他の疾患と形状が似ているため、心配な方は自己判断せずにクリニックに相談すると良いでしょう。
脇の下のシミや黒ずみを治す有効なセルフケアは?
脇の下のシミや黒ずみのセルフケアを原因別に紹介します。以下の方法を試してみてください。
脇の下の摩擦を避ける
服や皮膚のこすれなどが日常的に起こっている場合は、その原因をなくすことが大切です。
脇の下に密着するタイプの下着や服装などは避けて、少しゆとりのある通気性の良いデザインの服装を選びましょう。
また脇周りから背中や二の腕に皮下脂肪が多い方は、脇の下の皮膚の摩擦が多くなります。猫背や前かがみの姿勢を正し、肩甲骨や胸の筋肉を適切に使うことで脇周りを引き締めたり、原因である脂肪を減らすためにダイエットしたりすると良いでしょう。
脇の下に強い刺激を与えない
脇の下に強い刺激を与えるカミソリやナイロンタオルなどの使用を控えましょう。毛穴を塞いで詰まらせる制汗剤や、肌に合わないデオドラントスプレーの使い過ぎにも注意が必要です。風通しの良い服を選んで汗を溜めないようにしましょう。
脇の下のスキンケアする
黒ずみの原因になる毛穴詰まりをなくすために、脇の下を清潔に保ちましょう。
週に1〜2回程度、肌に優しいスクラブ剤を使って古い角質を取り除くと良いでしょう。肌のターンオーバーが促進されて、黒ずみが改善されることがあります。
また、乾燥が黒ずみの原因になることがあるため、脇の下を十分に保湿することが大切です。保湿クリームなどで乾燥を防ぎましょう。
脇の毛の処理に気をつける
脇毛の処理には、より刺激の少ない女性用の電気シェーバーなどを使うと良いでしょう。毎日の脇の脱毛処理をやめたい、毛根部分が透けて見えるのがイヤ、という方には医療レーザーによる脱毛をおすすめします。毛根部分から脇毛を除去するため、毛根部分や埋没毛が透けて見える心配もありません。ひんぱんに面倒な脇のお手入れをする必要もなくなり、脇毛に付着する汗や臭いの原因となる細菌が減少するため、肌トラブルも減少します。
脇の下のセルフケアのデメリット
脇の下のシミや黒ずみを取るためには、上記のケアを継続的に行うことが大切です。
ただし、セルフケアでは改善までに時間がかかってしまい、内部に沈着したシミや黒ずみは治せないため、早くしっかり改善したいという方は、クリニックでシミや黒ずみの治療を受けることをおすすめします。
治すことのできない脇の下のシミや黒ずみを取る方法
脇の下のシミや黒ずみをはじめ、摩擦黒皮症は皮膚科、または美容皮膚科の治療で治すことができます。
脇の下の茶色いシミや摩擦黒皮症の治療
茶色いシミや摩擦黒皮症など、軽〜中度でメラニン色素が肌に沈着している場合は、トレチノインやハイドロキノンなどの美白作用のある塗り薬を使用して、徐々に色素の排出を促します。
またケミカルピーリングで古い角質や角栓を除去して、毛穴の詰まりをなくし、ターンオーバーの乱れを整えてシミのできにくい肌環境に導きます。
美白作用のあるビタミンCをイオン導入する治療も、肌の負担が少ないシミ除去効果が期待できます。
脇の下の黒ずみの治療
黒ずみなどの重度のメラニン沈着には、上記の治療に加えて、レーザートーニングを行います。メラノサイトを刺激しないように、低出力のレーザーを定期的に照射することで黒ずみを改善に導きます。
当院ではQスイッチYAGレーザーまたはピコレーザーを使用して、メラニン色素を分解して排出させることで、黒ずみを少しずつ薄くしていきます。
脇の下のシミや黒ずみ治療は“じっくり解決”が成功のカギ
脇の下の皮膚は薄くデリケートなため、一度に強い薬や強力なレーザー等を使用すると悪化するリスクがあります。
また、治療は皮膚のターンオーバーの周期にあわせて徐々に行うため、シミや黒ずみ取りの治療には時間がかかります。
個人差はありますが、効果が出るまで5ヶ月以上掛かる場合もありますので、気になる方は早めにスタートすると良いでしょう。
脇のシミ・黒ずみの関連施術
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この記事の監修医師
銀座よしえクリニック 総院長廣瀬 嘉恵 医師 医学博士
銀座よしえクリニック 総院長
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